アース・オーバーシュート・デーについて
地球の自然の予算と、私たちの暮らしを見える化する日
地球の自然の予算と、私たちの暮らしを見える化する日
私たちの暮らしは、どのくらい地球の資源を「使い過ぎ」ているのでしょうか。
それを表す象徴的な日が、アース・オーバーシュート・デー(EOD: Earth Overshoot Day)です。
アース・オーバーシュート・デーとは、地球が1年間に再生できる自然資源と生態系サービスを、人類がその年のうちに使い切る日のことです。国際環境シンクタンクであるグローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN: Global Footprint Network)によって、毎年算定・発表されています。
日本語では、「年間資源使い切りデー」と表現すると、イメージしやすいかもしれません。
地球には、森林、農地、海、土壌、生物多様性など、私たちの暮らしや経済活動を支える自然の再生力があります。この自然の再生力の範囲内で暮らしていれば、自然資本を維持しながら社会を続けることができます。
アース・オーバーシュート・デーは、1年間に地球の生態系から供給される生物資源量(バイオキャパシティ)と、人間活動による自然への需要量(エコロジカル・フットプリント)を比較し、それを日付に換算して示すものです。
算定された日付が12月31日に近いほど、地球の再生力の範囲内に近い暮らし方をしていることになります。
逆に、日付が年の前半に近づくほど、自然資源を使う速度が、自然が再生する速度を大きく上回っていることを意味します。
アース・オーバーシュート・デーから年末の12月31日までの期間は、人類が生態学的な赤字の状態で活動している期間といえます。
銀行の預金にたとえるなら、利息ではなく元本に手をつけている状態です。地球の場合、その元本にあたるのが自然資本です。
*自然資本:将来にわたって価値のある生態系グッズやサービスの流れを生み出す、自然生態系のストック。
上のグラフは、1972年から2026年までのアース・オーバーシュート・デーの推移を示しています。
青い部分は、地球がその年に再生できる自然資源の範囲内で活動している期間です。一方、オレンジ色の部分は、その年の自然の予算を使い切った後、自然資本を取り崩しながら活動している期間を表しています。
銀行の預金にたとえるなら、利息の範囲を超えて、元本に手をつけている状態です。
この状態が一時的なものであれば、自然が回復する余地もあります。しかし、オーバーシュートはすでに50年以上続いており、その影響は少しずつ積み重なっています。
耕作地の生産性の低下、漁業資源の減少、森林伐採による生物多様性の損失、そして大気中のCO₂濃度の上昇による地球温暖化。これらは別々の問題に見えますが、根っこには共通した構造があります。
それは、私たちが自然の再生能力を上回る速度で、資源を使い、廃棄物を出し続けているということです。
アース・オーバーシュート・デーが伝えているのは、単に「日付が早くなった、遅くなった」ということではありません。私たちの暮らしや経済活動が、自然の再生力の範囲に収まっているのかを問い直すためのメッセージです。
アース・オーバーシュート・デーは、単に「地球環境が危ない」と知らせるための日ではありません。私たちの暮らしや経済活動が、地球の再生力とどのような関係にあるのかを見える化し、これからの社会のあり方を考えるための日です。
50年以上続いているオーバーシュート、つまり地球の再生力を超えた自然資源の使い過ぎの状態から抜け出すために、私たちにできることはすでに数多くあります。
グローバル・フットプリント・ネットワークは、それらの具体的な選択肢を「Power of Possibility(可能性の力)」として紹介しています。これは、アース・オーバーシュート・デーを後ろへ動かすために、どのような取組がどれくらい効果を持ちうるのかを示すものです。
たとえば、食料の分野では、世界の食品ロスを減らすことで、アース・オーバーシュート・デーを13日後ろへ動かせる可能性があるとされています。また、食生活を植物由来の食事へシフトすることでも、7日後ろへ動かせる可能性があります。
地域の食を見直すことも、小さく見えて重要な取組です。地産地消を進めることは、輸送や流通に伴う負荷を減らし、地域の生産と消費のつながりを取り戻す一歩になります。
農業や土地利用の分野でも、可能性があります。環境再生型農業、混牧林、間作林など、自然の再生力を高めながら生産を行う方法は、食料生産と生態系の回復を両立させる取組として注目されています。
詳細は、アース・オーバーシュート・デー公式サイト の「Power of Possibility」ページをご参照ください。
これらは、一つの方法だけで問題を解決するという意味ではありません。大切なのは、暮らし、企業活動、地域づくり、政策を少しずつつなぎ直し、自然の再生力の範囲に近づけていくことです。
Global Footprint Network のマティス・ワケナゲル氏は、「オーバーシュートは物理法則上、永遠には続かない。終わり方は、私たちが意図して設計するものになるのか、それとも災害や資源制約によって強制されるものになるのか。そのどちらが望ましいかは、選ぶまでもない」と述べています。
アース・オーバーシュート・デーを後ろへ動かすことは、単なる環境対策ではありません。自然の予算の中で、より豊かに暮らす社会を設計し直すことです。
そして、その変化は、国や企業だけがつくるものでもありません。私たち一人ひとりの行動の積み重ねも、オーバーシュートという赤字状態を小さくしていきます。
日々の選択を少し見直すこと。身近な人に話してみること。SNSで発信し、関心の輪を広げること。そうした小さな行動も、社会の空気を変え、企業や地域、政策の選択を後押しする力になります。
アース・オーバーシュート・デーを終わらせる。
災害ではなく、デザインによって。
未来は、我慢だけでつくるものではありません。
見える化し、選び直し、よりよい仕組みをデザインすることで、社会は少しずつ変えていくことができます。
アース・オーバーシュート・デーは、地球のバイオキャパシティと、人類のエコロジカル・フットプリントを比較して算定されます。
バイオキャパシティとは、森林、農地、漁場などが1年間に再生・供給できる生物資源や、CO₂を吸収する能力を表します。一方、エコロジカル・フットプリントは、人類が食料、木材、繊維、都市空間、CO₂吸収などのために必要としている生物生産力への需要を表します。
計算の考え方は、次のように表されます。
アース・オーバーシュート・デー
= 地球のバイオキャパシティ ÷ 人類のエコロジカル・フットプリント × 365日
この結果、人類のエコロジカル・フットプリントが地球のバイオキャパシティを上回るほど、アース・オーバーシュート・デーは年の早い時期に来ることになります。
なお、実際の算定には、各国のエコロジカル・フットプリントとバイオキャパシティを整理した National Footprint and Biocapacity Accounts が用いられています。これらのデータは、国際統計や各種データの更新に伴い、過去の結果が修正されることもあります。そのため、毎年発表される日付は、実際の環境負荷の変化だけでなく、データ更新の影響も受けます。