全般的なもの

エコロジカルフットプリントとは?

エコロジカル・フットプリントとは、「生態系を踏みつけている足跡」という意味です。人間の活動が地球環境にどれくらい負荷をかけているかを示す指標です。

バイオキャパシティ(生物生産力)とは?

バイオキャパシティとは、ある期間(通常1年)に、地球が自然資源を再生産し、廃棄物(とくに二酸化炭素)を吸収する能力を、土地と水域の面積で表したものです。

オーバーシュート(需要超過)とは?

オーバーシュートとは、人間が生態系を利用する量が、地球が自然を再生し二酸化炭素を吸収する量を超えた状態のことです。オーバーシュートは、地球の生命維持に必要な自然資源の枯渇や、二酸化炭素の排出の蓄積につながります。

エコロジカル・フットプリントでは何を測定するのですか?

エコロジカル・フットプリントは、「個人、国、世界など、人間の活動」が、「生物学的に生産可能な土地や海の面積」※をどれだけ使っているかを測定するものです。これには、再生可能な資源の生産、都市のインフラや道路の設置、廃棄物(特に二酸化炭素)の分解や吸収などが含まれます。

※生物学的に生産可能な土地と海には農地、森林、漁場が含まれますが、砂漠、氷河、外洋は含まれません。

「生産可能な土地と海」は、国ごと土地利用タイプごとに生産性が異なります。そのため比較できるように係数を使って換算し、独自の単位グローバルヘクタールを使用しています。また、科学的な計算方法も標準化されているため、さまざまな評価結果を比較することができます。

個人でエコロジカル・フットプリントを測定する方法(計算機)はありますか?

信頼できるエコロジカル・フットプリント計算の結果を得るためには、グローバル・スタンダードにもとづいた計算で作成されたものかどうかを確認する必要があります。グローバル・フットプリント・ネットワーク作成の「エコフット計 (Ecological Footprint Calculator)」を推奨します。

2007年にエコロジカル・フットプリント・ジャパンが作成した日本版「個人診断クイズ」も当時のスタンダードにもとづいています。現在改訂中です。

他にも、さまざまなエコロジカル・フットプリント測定ツール(計算機)がオンライン上で公開されていますが、使用するにあたっては、エコロジカル・フットプリントを実際に測定しているかどうかが重要です。

エコロジカル・フットプリントと「フットプリント」はどう違うのですか?

「エコロジカル・フットプリント」は、課題「ある集団の活動が、地球の生産できる能力をどれだけ必要としているか」を解決するための考え方を示す固有名詞です。より広く普及させるため、あえて商標登録はしていません。

「フットプリント」は、人間が地球に与える影響や負荷など、別の課題を指す一般的な用語です。

エコロジカル・フットプリントと環境収容力とはどのように違いますか?

「環境収容力」とは、ある土地や海域のなかで特定の種が生息できる最大個体数、のことです。多くの生物は消費量がわかりやすく、比較的容易に環境収容力の計算ができます。しかし、人間の環境収容力を計算するには、将来の一人当たりの資源消費量、生活水準と欲求(「ニーズ」とは異なる)、生物圏の生産性、技術の進歩など、さまざまな変数の仮定が必要となります。そのため、人間の収容力は推測の域を出ず、不確実なものとなります。

この環境収容力の課題に別の角度から取り組んだのが、エコロジカル・フットプリントです。エコロジカル・フットプリントは発想を転換し、潜在的な状態を推測するのではなく、過去の実績を記録しました。地球上で何人の人間を養うことができるかを問うのではなく、現在と実績だけを考慮します。フットプリントでは、ある年の生活水準、生物学的生産、技術の下で、その年に地球上に住むすべての人々を支えるために必要な地球の数を割り出します。

エコロジカル・フットプリントは、貿易、技術、GDPに否定的ですか?

エコロジカル・フットプリントは、貿易を否定も肯定もしていません。エコロジカル・フットプリントの算定には輸出入の流れを反映していますが、貿易自体の利益、不利益についての判断はしていません。貿易は、自然資源を最終的に消費する国に配分するものととらえています。

また、技術の価値について判断はしません。新しい技術ができて、地球が生産できる能力に影響を与えたり、人間の需要量が変化したりすると、バイオキャパシティやフットプリントの数値に反映されます。言い換えれば、ある年に報告されたフットプリントとバイオキャパシティの結果は、その年に使用された技術の機能の一部であるとも言えます。これは、技術がプラスかマイナスかを判断するものではなく、その技術が資源の流れにどのような影響を与えるかを示すものです。また、フットプリントは、予測ではなく過去の記録であり、将来利用可能になる可能性のある技術については判断しません。

さらに、エコロジカル・フットプリントは、国内総生産(GDP) を否定も肯定もしていません。GDPは、一定期間内に国内で産出された付加価値(儲け)の総額で、国の経済活動状況を知る指標です。一方で、国の傾向を包括的に理解するためには、失業統計、長寿統計、生態系資産の測定など、追加の指標が必要です。エコロジカル・フットプリントはGDPに代わるものではなく、補完する指標として役立ちます。

算定方法

エコロジカル・フットプリントはどのように計算するのですか?

エコロジカル・フットプリントは、ある期間(通常1年)に、ある集団(国、都市など)が消費する資源を生産するために必要な土地や水域面積と、廃棄する二酸化炭素を吸収するのに必要な土地面積を合計します。

食卓に並ぶ肉、魚、米、野菜、乳製品などは、家畜のための牧草地、農作物のための耕作地、水産物を得るための海洋などで成り立っています。住居用の木材や紙は、森林から得ています。学校、病院、工場などのための土地や、人間が排出する二酸化炭素を吸収するための森林も必要です。

ある国の消費量は、国際貿易の流れも計算に入れる必要があります。その国の生産量に輸入量を加え、輸出量を差し引いて算出します。

消費EF = 生産EF +(輸入EF – 輸出EF)

 

<算定の手順>

  1. 算定に使用するデータ:国連食糧農業機関(FAO)、国連商品貿易統計データベース(UN Comtrade)、国連統計部(UNSD)、国際エネルギー機関(IEA)など、国連やその関連機関が提供するデータ。査読付き科学ジャーナルの研究論文や国際情報なども使用。
  2. 約1,5000項目のデータを使用して、ある集団(国など)が1年で消費する資源量を生産するのに必要な土地と海の面積を算出する。

土地と海の面積を、国や土地利用タイプごとに比較できるようにするため、地球上の均一な面積に換算する。その集団が消費する資源の量(トン)を、資源が生産された、あるいは廃棄物が吸収された土地や海の面積の収穫量(1ヘクタールあたりのトン)で割る。この結果得られたヘクタール数は、収量係数と等価係数※を用いて世界のヘクタール数に換算され、独自の単位グローバル・ヘクタールで示す。

等価係数とは何ですか

等価係数とは、さまざまな種類の土地(耕作地、牧草地、森林、海洋、生産阻害地)をグローバル・ヘクタールという共通の単位に変換するための重要な因子です。農地や森林など特定の土地タイプの世界平均的な土地1ヘクタールを、等価なグローバルヘクタールに変換する生産性ベースのスケール因子のことです。この等価係数は、特定の年における異なる土地利用タイプの相対的な生産性の評価に基づいています。最新の計算方法では、異なる土地利用タイプの生産能力の代理指標として、農業生産への適合性を示す指標を用いています。また、最新でより正確な計算方法について継続的に検討されています。

収量係数とは何ですか?

収量係数は、同じ土地利用でも異なる地域による違いを、比較できるようにするものです。ある土地の生産能力は、気候、地形、管理方法などによって大きく異なります。例えば、牧草地の収量係数は、ある国の平均的な牧草地の生産性と、世界の平均的な牧草地の生産性を比較するものです。収量係数は、特定の国における特定の土地利用タイプ(牧草地など)の1ヘクタールを、同じ土地利用タイプで世界平均のヘクタールに相当する数に変換します。この換算係数を使って、特定の土地利用タイプの世界平均のヘクタールを世界のヘクタールに換算することができます。土地利用タイプの国別収量係数は、その土地利用タイプ(例えばドイツの森林)の平均収量と、その土地利用タイプ(森林)の世界平均収量との比率として計算されます。収量係数は、各国の各土地利用タイプについて、各年ごとに計算されます。

グローバルヘクタールとは何ですか? 

グローバルヘクタールとは、ある年の世界の生物学的に生産可能なすべての陸地と海域の平均生産性を包括する共通の単位です。生物学的に生産可能な地域とは、農地、森林、漁場などで、砂漠、氷河、外洋は含まれません。

グローバルヘクタールという共通の単位を使うことで、異なる種類の土地を共通の分母で比較することができます。等価係数は、農地や牧草地などの異なる種類の土地の物理的なヘクタールを、グローバルヘクタールという共通の単位に変換するために使用されます。

データの精度と改善

エコロジカル・フットプリントのデータを理解するときに役立つ資料は何ですか?

「エコロジカル・フットプリント基準」

使用する統計データ、変換係数の算出方法、調査限界の設定、調査結果の正確な伝達など、フットプリントの方法論と伝達方法が記載されています。

Ecological_Footprint_Standards_2009.pdf (footprintnetwork.org)

 「国別フットプリント勘定」

1961年から現在まで、約200ヵ国の情報が公開されています。この情報は、国別フットプリント勘定諮問委員会が管理しています。

https://data.footprintnetwork.org/?_ga=2.134161606.95686558.1643952701-1911259638.1638515887#/

エコロジカル・フットプリントの計算には、世界の状況や環境活動の必要性についての主観的な判断は含まれていますか。

エコロジカルフットプリントは、あるべき姿や、人々が何をすべきかについては一切言及しません。地球の再生能力のうちどれだけが人間の活動によって占有されているかという問いに対して、客観的かつ再現可能な答えを提供するものです。エコロジカルフットプリントの手法には、規範や意見に基づく判断や重み付けの要素は含まれていません。例えば、異なる種類の土地をグローバルヘクター ルという共通の単位に集約するための等価係数は、生産性に関する経験的な測定に基づいています。

国民経済計算システムや GDP などの他の分析指標と同様、エコロジカル・フットプリントは、明確に定義された単一の研究課題に基づき、できる限り客観的で透明性の高い科学的な回答を提供するものです。研究課題を最初に定義するプロセスには、どの課題が重要かという規範的な判断が含まれますが、研究課題が特定された後は、その課題に科学的に答えることとなります。

エコロジカル・フットプリント分析の基準はどのように決まるのですか。

国際シンクタンクのグローバル・フットプリント・ネットワークが基準委員会を設置し、ソースデータの使用、変換係数の導出、調査境界の設定、調査結果の正確な伝達など、フットプリントの方法論を扱う基準文書を公表しています(www.footprintstandards.org)。この基準は、エコロジカルフットプリントの調査・評価を行う他の分析者に広く利用されています。

また「国別フットプリント勘定」のデータ管理は、グローバル・フットプリント・ネットワークが設置する国内諮問委員会が監督しています。

二酸化炭素について

二酸化炭素はどのように扱われますか? 「カーボン・フットプリント」とは何ですか?

エコロジカル・フットプリントでは、排出される二酸化炭素を吸収するために必要な森林の面積を、カーボン・フットプリントといいます。これは、森林や海洋の生産能力と炭素吸収能力とを包括的にとらえて評価するものです。つまり、二酸化炭素を、生態系の他の構成要素との関係性のなかでとらえるものです。

例えば、1,000 トンの二酸化炭素を排出した場合、この炭素を吸収するためには 1,000 ヘクタールが必要ですが、 実際には500 ヘクタールしかないとすれば、残りの排出量を削減する必要があることがわかります。

また、二酸化炭素の排出を減らすために化石燃料からバイオマス燃料への移行することは、森林への影響など地球全体を考えると人間の需要を減らすことにつながるのか、あるいはかえって増やしてしまうのか、といった視点ができます。さらに、土地利用の観点から、バイオマス燃料の使用を増やすことは、農地を森林に戻すことよりも効果的なのか、それとも効果的ではないのかという示唆を与えてくれます。

一方、2000年以降の地球温暖化対策のなかで、経済活動を通じて排出される二酸化炭素の意味で「カーボン・フットプリント」を使われることが多く見受けられます。これは、生態系の炭素吸収能力にのみ注目し、評価するものです。このように、「カーボン・フットプリント」は2つの異なる意味で使用されており、混乱しやすくなっています。

淡水

「ウォーター・フットプリント」とは何ですか、エコロジカル・フットプリントとどのように関連するのでしょうか。

「ウォーター・フットプリント」は、水を利用する製品材料の栽培や生産、製造や加工、輸送、流通、消費、廃棄そしてリサイクルまでの「ライフサイクル」全体を視野に入れ、水環境の影響を定量的に評価するためのものです。影響の大きさは、m3単位の水の量で表します。

エコロジカル・フットプリントの対象は、人間が使用する生物学的資源。ウォーター・フットプリントの対象は、人間が使用する淡水です。両者はそれぞれ異なる情報を提供しており、競合する指標ではなく、人間の消費と自然資本の利用についての相互補完的な指標です。

エコロジカル・フットプリントとウォーター・フットプリントの類似点と相違点の詳細については、A.Y. Hoeksta の論文「Human appropriation of natural capital: A comparison of ecological footprint and water footprint analysis」と A. Galli の論文「Integrating Ecological, Carbon and Water footprint into a “Footprint Family” of indicators: Definition and role in tracking human pressure on the planet」で述べられています。

エコロジカル・フットプリントでは、水の使用量はどのように扱われるのですか?

エコロジカル・フットプリントは、その物質を生産するために必要な生物学的に生産可能な土地と海の面積を表しています。淡水は生物圏で循環している自然資源で、生物圏の重要な財やサービスに関連していますが、それ自体は生物学的生産力のある地域で作られた物質でもなく、そこに吸収される廃棄物(二酸化炭素など)でもありません。そのため、水のフットプリントは、作物や木材の量と同じようには計算できません。

水の利用について、一定量の水を供給するために必要な集水域や涵養域の面積として算出はできますが、この面積を他の土地利用面積に加算すると二重計上になるため、算入できません。(例えば、森林は木材生産と集水域の両方に利用できるが、この2つの値を加算すると利用可能な森林の量が2倍になる)

汚染物質と非再生物質

エコロジカル・フットプリントではリサイクルをどのように考慮するのですか。

エコロジカル・フットプリントは、自然資源を生産し、二酸化炭素を吸収するために必要な土地の面積であらわします。資源をリサイクルすると、新たな生産のための資源利用や二酸化炭素発生が抑えられるので、土地利用が減り、エコロジカル・フットプリントは下がります。例えば、紙をリサイクルすると、新たな原木の伐採が減るため、エコロジカル・フットプリントが下がります。

リサイクルによって得られた節約分は、リサイクルする人やリサイクル品を購入する人に、さまざまな形で配分することができます。

・再生紙を購入した人に100%還元(100%再生紙に含まれる木材繊維のフットプリントは、新しいペーパーを購入した人にすでに割り当てられているため、森林フットプリントはゼロ)。

・ 100% 紙をリサイクルする人(100%新しいペーパーを購入した人が、すべてをリサイクルした場合、そのペーパーに含まれる木材繊維のフットプリントはゼロとなる(リサイクル工程で繊維が失われないと仮定すれば、すべてが後で再利用されるからである))

・再生紙を購入する人と再生紙をリサイクルする人とで分配する(節約分を50%ずつ、またはその他の割合に配分できる)。

研究者によってリサイクルによる節約分の配分原則は異なり、基準に準拠したフットプリント調査(www.footprintstandards.org)では、選択した配分方法を明示しています。しかし、配分方法にかかわらず、エコロジカル・フットプリントの削減は、リサイクルではなく、消費する材料の総量を減らすことで達成できることがほとんどです。

エコロジカル・フットプリントでは廃棄物の流れをどのように扱っているのか。

「廃棄物(waste)」には3種類あり、それぞれで対応が異なります。

1. 農作物の残渣、伐採した木の剪定枝、木材や化石燃料の燃焼で発生する二酸化炭素などの廃棄物。

1 ヘクタールの牧草地で草を食む牛のフットプリントは、生物学的食料の生産と生物学的廃棄物の吸収の両方で 1 ヘクタールになります。この1ヘクタールは両方のサービスを提供しているため、牛のフットプリントは2回(1回は物質生産、1回は廃棄物吸収)カウントされることになります。これは、牛を支えるために必要な実際の面積を二重に計算することになってしまうので、収穫されたすべての生物学的材料の吸収に関連するフットプリントは、それらの材料のフットプリントにすでにカウントされています。

2.埋立地に送られる廃棄物

埋立地がかつては生物学的に生産されていた地域を占めている場合、この埋立地の廃棄物のフットプリントは、その長期的な保管に使用される面積として計算されます。

3.人間の経済活動によって放出された有害物質や汚染物質で、生物学的プロセスでは吸収や分解が不可能な廃棄物

エコロジカル・フットプリントは、物質の生産や廃棄物の吸収に必要な面積を測定するため、生物学的プロセスで生成されず、吸収されないプラスチックなどの物質は対象としていません。これらの物質は、環境中に放出されると生態系にダメージを与える可能性があり、実際に発生した場合には、エコロジカル・フットプリントの手法を用いてバイオキャパシティの損失を測定することができます。しかし、このような評価は困難であり、あまり行われていません。毒物や汚染物質のフットプリントの評価ができるようになれば、これらの物質の抽出、処理、取り扱いのフットプリントを算定しますが、これらの物質自体の生成や吸収のフットプリントは含まれません。

エコロジカル・フットプリントでは、汚染や有害廃棄物をどのように考慮するのか。

エコロジカル・フットプリントは、物質の生産や二酸化炭素の吸収に必要な面積を測定するものなので、自然界で吸収や分解ができないもの、例えばプラスチックなどは算定対象にはなりません。また、水銀も対象となりません(ただし、その抽出、加工、輸送には、カーボン・フットプリントが生じることはあります)。有害物質にかかわる重要な懸念事項(将来の保管リスクや人間の健康への影響など)は、エコロジカル・フットプリント以外の指標で把握するのが適切です。

一方、有害物質は、環境中に放出されると生態系にダメージを与える可能性があります。実際に発生した場合には、エコロジカル・フットプリント分析を用いて、バイオキャパシティの損失を算定し、汚染物質の放出の原因となる活動に反映させることができます。

しかし、汚染と生態系被害の関係は地域ごとに異なり、また関連データが必要であるため、実際に計算するのは困難です。毒物や汚染物質のフットプリントは、一般的にはこれらの物質の抽出、処理、取り扱いのフットプリントであり、物質自体の生成や吸収のフットプリントは含まれません。

銅、スズ、石炭、石油などの非再生資源は、どのように扱っていますか。

鉱物(銅、スズなど)の生産量は、再生可能な土地に換算することができません。木材はその生産にかかわる土地がありますが、鉱物の産出には、再生する土地がないからです。一方で、鉱物資源の抽出、精製、加工、出荷に使用されるエネルギーやその他の材料に関連するエコロジカル・フットプリントは存在し、鉱物のフットプリントとして報告されます。また、採掘された水銀やヒ素などの物質が環境中に入ると、土地の生産性の低下を招く恐れがあり、将来のバイオキャパシティに影響することも注意すべき点です。

化石燃料資源(石油、石炭など)は、生物由来の古代物質です。燃焼されることで生物圏の物質循環の一部である二酸化炭素が放出されます。化石燃料の燃焼によって放出された二酸化炭素を吸収するために必要な森林面積として、計算されています。

エコロジカル・フットプリントと生物多様性との関係は?

エコロジカルフットプリントは、生物多様性の豊かさを直接表す指標ではありませんが、以下の点から生物多様性の評価と保全をサポートしています。

生物多様性の損失を引き起こす根本的な要因や大きな圧力の指標として利用できます。国連生物多様性条約の2020年愛知目標や欧州環境局の生物多様性指標合理化(SEBI)プロセスでは、エコロジカル・フットプリントを生物多様性への圧力の指標として採用しています。

また。個々の保全活動は、エコロジカル・フットプリントの削減につながるものと、バイオキャビシティの増加につなかるものとがあります。例えば、同じ収穫量であれば、FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)の木材と非認証材のエコロジカル・フットプリントは同じです。一方、認証材は非認証材に比べて、森林の持続可能性を高める効果が大きいため、将来のバイオキャパシティ評価に反映されます。

エコロジカル・フットプリントでは、原子力発電をどのように扱っていますか?

1997年以降、原子力発電は、「国別フットプリント勘定」のなかで独立したフットプリント構成要素として含まれていました。そこでは、生物圏における原子力の需要を計算することは困難であるため、原子力発電の1単位は、世界平均的な化石燃料の混合で生産された電力の1単位と同等のフットプリントを持つと仮定していました。

その後、国別経済計算委員会は原子力発電所の土地構成要素を削除することを勧告し、2008 年版「国別フットプリント勘定」から適用されています。国別経済計算委員会は、原子力発電のフットプリントを計算するための排出権代理アプローチは、以下の理由から科学的に健全ではないと結論づけました。

  1. 化石燃料による電力のカーボン・フットプリントと原子力による電力の需要が同等であると仮定する科学的根拠がない。
  2. 原子力発電に関する主な懸念事項は、コストや不当な補助金、将来の廃棄物貯蔵、発電所事故のリスク、兵器拡散やその他の安全保障上のリスクなどである。エコロジカル・フットプリントは予測ではなく過去の実績記録として設計されているため、バイオキャパシティに対する将来の潜在的な影響を考慮すべきではない。

2003 年「国別フットプリント勘定」では、原子力のフットプリントが全体に占める割合は約 4%でした。そのため、ほとんどの国では、この計算方法の変更が与える影響はごくわずかです。しかし、ベルギー、フィンランド、フランス、日本、スウェーデン、スイスなど、原子力発電の供給量が多い国では、この変更が各国のフットプリントの値に大きな影響を与えました。なお、原子力のフットプリント要素を除外することは、原子力エネルギーに対する姿勢を示すものではありません。

同志社大学経済学部の和田喜彦教授は、2011年の福島第一原子力発電所の深刻な事故によるバイオキャパシティへの影響を算定しました(2012, WWFジャパン)。この試算では、当時避難区域に設定された土地は、日本のバイオキャパシティの約3%に相当します。また、外部放射線への被曝線量が正常時での一般市民に関して法律で定める許容線量(、1年の被曝線量 1 ミリシーベルト以下)を超えると予想される区域は、日本のバイオキャパシティの10%に相当しました。

日本の2012年版エコロジカル・フットプリントはこちらをご覧ください。

https://www.wwf.or.jp/activities/lib/lpr/WWF_EFJ_2012j.pdf