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2022年アースオーバーシュートデー「会長声明とメッセージ」

By 3月 5, 20237月 25th, 2023アースオーバーシュートデー

2022年7月28日 アースオーバーシュートディを迎えるにあたっての会長声明

「自然資源の赤字を黒字に転換へ」

ロシアのウクライナ侵攻は、多くの人命を奪い、生活を破壊しています。戦争は大地と海に棲む生きとし生けるものの命と尊厳を奪い去ります。そればかりか、人々がこつこつと積み上げたSDGs実現への努力と果実を一瞬で打ち砕きます。日本を含む国際社会は即時停戦を実現させなければなりません。戦争が長期化し、世界的にエネルギーの供給不安定や食料危機などの懸念が一層高まっています。戦争によって地球環境危機の深刻さが増すなか、環境課題の解決を遅らせることはできません。

<地球の限界>

人間の存続の基盤である環境には限りがあり、生態系が提供する財やサービスにも限界があります。地球環境の均衡を保つには、生態系が提供する財やサービスの範囲内で人間が生活することが求められます。しかし、過去50年、地球が供給する資源の範囲を人間の利用が超えている状態(オーバーシュート)が続いており、地球温暖化や生物多様性の減少が進んでいます。

<2030ネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せる)>

この事態を食い止め、回復させるには、人間の生産と消費を持続可能な形に変えることが必要です。日本を含む世界のリーダーたちが約束した「2030年までに生物多様性の損失を反転させる」10の行動のひとつに「持続可能な生産と消費への移行」があります(「リーダーによる自然への誓約」(2020年))。そのためには、生態系の循環の一部としての人間の経済活動が自然の法則にしたがうことが求められます。また、海外の自然資源に大きく依存している日本は、自然資源の利用方法を見直し、世界の環境保全に貢献する責任があります。

<持続可能な生産と消費へ>

私たちは、人間も経済も自然の一部として存在しているという世界観に立脚し、日本が自然の価値を組み込む新しい経済と社会を構築できるよう、支援します。また、行政、企業など、さまざまな団体と協調して、「持続可能な生産と消費」を推し進めていきます。

特定非営利活動法人エコロジカル・フットプリント・ジャパン

会長 和田 喜彦

■この趣旨に賛同してくださる方々から、以下のようなメッセージをいただきました。(五十音順・敬称略)

幸福智|いであ株式会社 主査研究員


近年の自然災害の規模・頻度は、私たちが過去の経験から獲得してきた知識からだけでは説明しきれない、いわば「想定外」の水準になりつつあります。そして、「想定外」はこれからも増え続けるでしょう。

しかし、私たち技術者はあらゆる事態を想定し、持続可能な社会に至る道筋とゴールを示す責任を負っています。エコロジカル・フットプリントは、この思考を表現する上で間違いなく有益です。

はるか遠いゴールではありますが、「想定外」という言葉に逃げず、手探りでも意味ある一歩を皆さんと歩んでいきたいと願っています。


齋藤智咲・松井孝典 |大阪大学


私たちは地球と共に生きています。

地球を想うことは、目の前の人を想うことであり、自分を想うこと。地球に優しく生きることは、自分にも優しい生き方だと思います。

一緒に「地球に優しい」を選んでみませんか?

我慢したり押し付けたりするのではなく、日頃のちょっとした行動を変えるだけで、地球への負荷を減らすことができ、私たちの心はすこし豊かになります。

心にも地球にも優しい選択ができる社会を一緒に創りましょう。


土屋 一彬|国立環境研究所 主任研究員 


多くの人が都市に住む現代では、日々の生活と自然とのつながりがみえにくくなっています。その一方で、人間による温室効果ガスの排出と資源の利用は、地球の生態系に大きな影響を与えています。エコロジカル・フットプリントは、こうした影響を1つの数字でシンプルに表現するものです。

あなたの住むまちのエコロジカル・フットプリントを知り、世界各地の数字とくらべてみることで、日々の生活と地球の生態系とのつながりについて考えてみませんか。


中野桂|滋賀大学経済学部 教授 


私には成人した子どもが二人います。やがて孫も生まれるかもしれせん。今の状況は猛スピードで壁に向かっていく車の中で、誰がハンドルを握るかを争っているような状況だと言われます。

僅かな経済的あるいは領土的利益に目を奪われるのではなく、争いをやめて直ちにフルブレーキをかけるしかありません。後部座先の子どもたちのために。


林岳|農林水産政策研究所 総括上席研究官


将来的に、「この取組によってこれだけオーバーシュートを遅らせることができます」というように、オーバーシュートが人々の行動指標になる日がやってくるでしょう。オーバーシュートを一分でも一秒でも遅らせるためには、バイオキャパシティを向上させること、エコフットを低下させることの両方が必要です。

それに向けて国民一人一人が努力をすること、さらにその努力を後押しする政策が求められていると思います。


毛利聡子|大学教員


国際的な市民社会は、持続可能な世界をつくるために大きなパワーを発揮するようになっています。NGOを中心とするダイベストメント運動の国際的なうねりが、国際金融機関の融資・投資先を化石燃料から再生可能エネルギーへと転換させています。脱炭素社会の実現に向けての市民社会パワーはここまで大きくなっています。

アースオーバーシュートディ(EOD)運動を各国の市民社会が盛り上げていけば、きっと近い将来「地球一個分の暮らし」を実現できると思います。私はこのような市民社会の担い手を一人でも多く育てることを夢見て教壇に立っています。