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あなたの会社はどれくらい自然資源を利用していますか
エコロジカル・フットプリント(以下、エコフット)は、人間が消費する量(需要)と地球が生産する量(供給)を比べるのが一般的ですが、企業が自社の自然資源利用量や廃棄量を評価するのにも活用できます。
ビジネスフットプリントの算定方法
定義の違いと範囲
エコフット分析は「地域」を対象にした分析ですが、事業活動におけるエコロジカル・フットプリント(以下、ビジネスフットプリント)は「事業活動」に焦点を当てた分析をおこないます。分析にあたっては、ライフサイクルアセスメント(LCA)分析をもとに下の図の算定範囲と項目を扱います。自社の事業活動だけでなく、原材料入手のために国内外での生産や輸入経路にかかるもの(上流)、消費者が使用するときに発生するもの(下流)まで、サプライチェーン全体を含みます。
使用するデータと計算
エコフット算定の目的は、事業活動に伴うビジネスフットプリントを正確かつ詳細に把握し、分析することにあります。どこからどの程度の自然資源を利用し、また、どこでどのくらいの二酸化炭素排出が発生しているかを確認します。算定に必要なデータは、算定範囲で使用する資源消費量、排出する二酸化炭素排出量 です。もし、国内の同業者と比較して私たちのビジネスフットプリント値を比較したい場合は、入手できるデータの種類を最初に整理しておく必要があります。
具体的な計算式はこちら
目標の設定
算定データをもとに目標を設定するときには、基準年(ベンチマーク)のビジネスフットプリントを算定し、それを基準に環境負荷の増減を分析します。通常のエコロジカル・フットプリント分析では、ある地域の消費量を地球が1年間に生産できる資源量(バイオキャパシティ)と比較し、「地球●個分の暮らし」と表します。しかし、ビジネスフットプリントにおいて「事業活動」と「地域(または国)のバイオキャパシティ」を単純に比較することはできません。算定範囲が通常の「地域を対象とした分析」と異なるからです。そのため、自社の基準年との比較で目標の実現をすすめます。
算定してみよう
架空の企業のデータを利用して、ビジネスフットプリントを算定してみましょう。事業活動のデータがビジネスフットプリントに「翻訳」されていくまでの流れを、体験版算定シートを通して疑似体験することができます。
下記の表は、「カレーコーポレーションA(仮)」社の事業活動別データです。この数値を使ってビジネスフットプリントを算定してみてください。
ビジネスフットプリントのよくある質問と答え
Q: 生産量を増やし成長していくには工場や原材料量を増やす必要があり、生産阻害地や森林地が増えてしまい、全体のエコフットが増えることは避けられないのではないか。
A: 生産量の拡大に伴うエコフットの増大への対処には、事業活動全体を最適化する必要があります。エコフット分析では、以下の3つの要素が特に重要視されます。
- 原材料の調達段階での負荷軽減: 持続可能な原材料の選定や、調達国や輸送手段の最適化を通じて、資源効率向上と環境への影響低減を図る。
- 生産効率の最適化: 生産プロセスの効率向上や省エネルギー化を推進し、持続可能な技術の導入やリサイクルの促進を通じて、環境への負荷を最小限に抑える。
- 消費段階でのエコフット抑制: 製品やサービスの使用時において、他の産業や消費者のエコフットを減少させる取り組みを検討する。例えば、エネルギー効率の高い製品や再利用可能な製品の促進など。
これらの要素を統合的に考慮することで、生産量の拡大を単なる数量の増加ではなく、製品のライフサイクル全体を最適化し、商品を通して社会全体の自然資本を最も適した状態にする機会として捉えなおすことがポイントです。
Q: 保全のための植林活動はエコフットではどのように扱われるのか。
A: エコフット分析は主に「エコロジカル・フットプリント」と「バイオキャパシティ」の2つの概念に基づいています。保全のための植林活動はエコフットの算定においては含まれず、バイオキャパシティの増加に寄与する形で扱われます。現在の『エコロジカル・フットプリント基準』では、企業活動のエコフット量から、企業の環境保全活動によるバイオキャパシティの増加量を差し引く、いわゆるオフセットの概念は使わず、2つの側面を同時に開示すことが求められます。このアプローチにより、企業の持続可能性の評価がより包括的で総合的に行うことができます。
Q: 資源再生するときにCO2排出量が増えることがあり、再生するより新しい資源を使ったほうがCO2削減につながると考える場合がある。エコフットの場合はどうか。
A: エコフットは、CO2排出だけでなく、6つの土地別フットプリント(耕作地、牧草地、森林地、漁場、生産能力阻害地、カーボンフットプリント)を包括的に評価する指標であり、再生資源の利用はこれらの要素を総合的に評価することになります。例えば、資源再生の際、CO2排出量は増えるが耕作地や森林地などのエコフットが削減され、全体としてエコフット量が減る場合は再生資源の活用が推奨されます。
また、中長期的な視点も必要になります。現段階の技術では確かに資源再生によりエコフット量が増える場合であっても、中長期的にみれば、エコフットを最小化し、地球の資源を持続可能な範囲で利用できる可能性が高いのであれば、再生資源の活用を進めるのがよいでしょう。
ただし、具体的な状況によっては、新しい資源の方が環境への負荷が少ない場合も考えられます。その場合は、資源再生可能な代替物へ転換も含め、環境への総合的な影響を考慮し、持続可能な選択を行うことが重要です。