企業活動と自然のつながりを「見える化」する
▼ なぜ今、企業にエコロジカル・フットプリントが求められているのか。
日本の「生物多様性国家戦略2023–2030」では、2030年までにネイチャーポジティブの実現を目指しています。エコフットは、同戦略の進捗を把握する関連指標のひとつとして位置づけられています。特に、自然を活用した社会課題の解決を掲げる基本戦略3や、生活・消費活動における行動変容を重視する基本戦略4と関係しています。企業においても、事業活動と自然との関係を見える化し、地域や社会への貢献を考えるために、エコフットの活用が広がっています。
その中で大切なことは、企業活動を「自然循環との関係の中で捉え直す」視点です。
そのための指標として用いるのが、エコロジカル・フットプリント(エコフット)です。エコフットは、人間活動が自然の再生能力に対して、どれだけの需要や負荷を生み出しているかを、ひとつの枠組みで捉える指標です。
▼ エコロジカル・フットプリント算定ガイドブック(企業編)を公開しました。
本ガイドブックは、企業活動に伴う環境負荷を把握し、意思決定に活かすために、企業のエコロジカル・フットプリント分析の基本的な考え方と進め方を整理したものです。
▼ 企業のエコロジカル・フットプリントに関心のある方へ
エコロジカル・フットプリント・ジャパン(EFJ)は、国際標準(Global Footprint Network手法)に基づき、企業エコフット算定・分析を支援しています。国内外の事例と、自然循環の視点から得られた知見をもとに、経営や政策の意思決定に資する支援を提供しています。
▼ よくある質問と答え
Q: 生産量を増やし成長していくには工場や原材料量を増やす必要があり、生産阻害地や森林地が増えてしまい、全体のエコフットが増えることは避けられないのではないか。
A: 生産量の拡大に伴うエコフットの増大への対処には、事業活動全体を最適化する必要があります。エコフット分析では、以下の3つの要素が特に重要視されます。
- 原材料の調達段階での負荷軽減: 持続可能な原材料の選定や、調達国や輸送手段の最適化を通じて、資源効率向上と環境への影響低減を図る。
- 生産効率の最適化: 生産プロセスの効率向上や省エネルギー化を推進し、持続可能な技術の導入やリサイクルの促進を通じて、環境への負荷を最小限に抑える。
- 消費段階でのエコフット抑制: 製品やサービスの使用時において、他の産業や消費者のエコフットを減少させる取り組みを検討する。例えば、エネルギー効率の高い製品や再利用可能な製品の促進など。
これらの要素を統合的に考慮することで、生産量の拡大を単なる数量の増加ではなく、製品のライフサイクル全体を最適化し、商品を通して社会全体の自然資本を最も適した状態にする機会として捉えなおすことがポイントです。
Q: 保全のための植林活動はエコフットではどのように扱われるのか。
A: エコフット分析は主に「エコロジカル・フットプリント」と「バイオキャパシティ」の2つの概念に基づいています。保全のための植林活動はエコフットの算定においては含まれず、バイオキャパシティの増加に寄与する形で扱われます。現在の『エコロジカル・フットプリント基準』では、企業活動のエコフット量から、企業の環境保全活動によるバイオキャパシティの増加量を差し引く、いわゆるオフセットの概念は使わず、2つの側面を同時に開示すことが求められます。このアプローチにより、企業の持続可能性の評価がより包括的で総合的に行うことができます。
Q: 資源再生するときにCO2排出量が増えることがあり、再生するより新しい資源を使ったほうがCO2削減につながると考える場合がある。エコフットの場合はどうか。
A: エコフットは、CO2排出だけでなく、6つの土地別フットプリント(耕作地、牧草地、森林地、漁場、生産能力阻害地、カーボンフットプリント)を包括的に評価する指標であり、再生資源の利用はこれらの要素を総合的に評価することになります。例えば、資源再生の際、CO2排出量は増えるが耕作地や森林地などのエコフットが削減され、全体としてエコフット量が減る場合は再生資源の活用が推奨されます。
また、中長期的な視点も必要になります。現段階の技術では確かに資源再生によりエコフット量が増える場合であっても、中長期的にみれば、エコフットを最小化し、地球の資源を持続可能な範囲で利用できる可能性が高いのであれば、再生資源の活用を進めるのがよいでしょう。
ただし、具体的な状況によっては、新しい資源の方が環境への負荷が少ない場合も考えられます。その場合は、資源再生可能な代替物へ転換も含め、環境への総合的な影響を考慮し、持続可能な選択を行うことが重要です。