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アースオーバーシュートディを迎えるにあたっての会長声明

「自然資源の赤字を黒字に転換へ」

ロシアのウクライナ侵攻は、多くの人命を奪い、生活を破壊しています。戦争は大地と海に棲む生きとし生けるものの命と尊厳を奪い去ります。そればかりか、人々がこつこつと積み上げたSDGs実現への努力と果実を一瞬で打ち砕きます。日本を含む国際社会は即時停戦を実現させなければなりません。戦争が長期化し、世界的にエネルギーの供給不安定や食料危機などの懸念が一層高まっています。戦争によって地球環境危機の深刻さが増すなか、環境課題の解決を遅らせることはできません。

<地球の限界>

人間の存続の基盤である環境には限りがあり、生態系が提供する財やサービスにも限界があります。地球環境の均衡を保つには、生態系が提供する財やサービスの範囲内で人間が生活することが求められます。しかし、過去50年、地球が供給する資源の範囲を人間の利用が超えている状態(オーバーシュート)が続いており、地球温暖化や生物多様性の減少が進んでいます。

<2030ネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せる)>

この事態を食い止め、回復させるには、人間の生産と消費を持続可能な形に変えることが必要です。日本を含む世界のリーダーたちが約束した「2030年までに生物多様性の損失を反転させる」10の行動のひとつに「持続可能な生産と消費への移行」があります(「リーダーによる自然への誓約」(2020年))。そのためには、生態系の循環の一部としての人間の経済活動が自然の法則にしたがうことが求められます。また、海外の自然資源に大きく依存している日本は、自然資源の利用方法を見直し、世界の環境保全に貢献する責任があります。

<持続可能な生産と消費へ>

私たちは、人間も経済も自然の一部として存在しているという世界観に立脚し、日本が自然の価値を組み込む新しい経済と社会を構築できるよう、支援します。また、行政、企業など、さまざまな団体と協調して、「持続可能な生産と消費」を推し進めていきます。

特定非営利活動法人エコロジカル・フットプリント・ジャパン

会長 和田 喜彦

■この趣旨に賛同してくださる方々から、以下のようなメッセージをいただきました。(五十音順・敬称略)

幸福智|いであ株式会社 主査研究員


近年の自然災害の規模・頻度は、私たちが過去の経験から獲得してきた知識からだけでは説明しきれない、いわば「想定外」の水準になりつつあります。そして、「想定外」はこれからも増え続けるでしょう。

しかし、私たち技術者はあらゆる事態を想定し、持続可能な社会に至る道筋とゴールを示す責任を負っています。エコロジカル・フットプリントは、この思考を表現する上で間違いなく有益です。

はるか遠いゴールではありますが、「想定外」という言葉に逃げず、手探りでも意味ある一歩を皆さんと歩んでいきたいと願っています。


齋藤智咲・松井孝典 |大阪大学


私たちは地球と共に生きています。

地球を想うことは、目の前の人を想うことであり、自分を想うこと。地球に優しく生きることは、自分にも優しい生き方だと思います。

一緒に「地球に優しい」を選んでみませんか?

我慢したり押し付けたりするのではなく、日頃のちょっとした行動を変えるだけで、地球への負荷を減らすことができ、私たちの心はすこし豊かになります。

心にも地球にも優しい選択ができる社会を一緒に創りましょう。


土屋 一彬|国立環境研究所 主任研究員 


多くの人が都市に住む現代では、日々の生活と自然とのつながりがみえにくくなっています。その一方で、人間による温室効果ガスの排出と資源の利用は、地球の生態系に大きな影響を与えています。エコロジカル・フットプリントは、こうした影響を1つの数字でシンプルに表現するものです。

あなたの住むまちのエコロジカル・フットプリントを知り、世界各地の数字とくらべてみることで、日々の生活と地球の生態系とのつながりについて考えてみませんか。


中野桂|滋賀大学経済学部


私には成人した子どもが二人います。やがて孫も生まれるかもしれせん。今の状況は猛スピードで壁に向かっていく車の中で、誰がハンドルを握るかを争っているような状況だと言われます。

僅かな経済的あるいは領土的利益に目を奪われるのではなく、争いをやめて直ちにフルブレーキをかけるしかありません。後部座先の子どもたちのために。


林岳|農林水産政策研究所 総括上席研究官


将来的に、「この取組によってこれだけオーバーシュートを遅らせることができます」というように、オーバーシュートが人々の行動指標になる日がやってくるでしょう。オーバーシュートを一分でも一秒でも遅らせるためには、バイオキャパシティを向上させること、エコフットを低下させることの両方が必要です。

それに向けて国民一人一人が努力をすること、さらにその努力を後押しする政策が求められていると思います。


毛利聡子|大学教員


国際的な市民社会は、持続可能な世界をつくるために大きなパワーを発揮するようになっています。NGOを中心とするダイベストメント運動の国際的なうねりが、国際金融機関の融資・投資先を化石燃料から再生可能エネルギーへと転換させています。脱炭素社会の実現に向けての市民社会パワーはここまで大きくなっています。

アースオーバーシュートディ(EOD)運動を各国の市民社会が盛り上げていけば、きっと近い将来「地球一個分の暮らし」を実現できると思います。私はこのような市民社会の担い手を一人でも多く育てることを夢見て教壇に立っています。


世界は地球 1 個分を 75%超過

世界は、地球が生産する能力を超えて自然資源を利用する、オーバーシュートの状態です。50年以上にわたり蓄積されるオーバーシュートの影響で、世界では異常気象、自然損失が起き、その結果、干ばつや食糧難が深刻になっています。そのような中、経済の繁栄を支える資源確保の重要性を認識し行動する、ゲームチェンジャーとなりえる団体や個人が生まれています。

エコロジカル・フットプリント・ジャパンは、国内の1つ1つの貴重な活動をつなぎ合わせ、大きなムーブメントへと成長させるべく、サーバントリーダーとして皆さまとともに行動していきます。

日本は地球が何個必要 ?

2.9

もし世界の人々が日本と同じ暮らしをしたら、地球 2.91 個分が必要になります。1961~2018年の過去50年間で、日本の1人当たりエコフットは 55 %増加しました。


日本のエコフットの詳細はこちら
76

日本のエコフットのうち二酸化炭素吸収の負荷が全体の 76 %を占めています。


日本の1人当たり土地別エコフット推移

0.6 (1人当たりバイオキャパシティ) – 4.6 (1人当たりエコフット) =  – 4.0 (バイオキャパシティ赤字)

87

日本は海外の自然資源に 87 %依存しています。日本のエコフットのうち国内のバイオキャパシティでまかなえるのは 13%にすぎません。


エコフットをさらに深堀する

エコロジカル・フットプリント分析


人間が地球環境につけた「あしあと」から環境への負荷を測ります。

エコフットについての詳細はこちら

オープンソース・データベース


世界のエコロジカル・フットプリントの情報を自由に閲覧、ダウンロードして調べられます。(提供:Global Footprint Network)

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エコフット診断クイズ


もし世界中のひとびとが、あなたとおなじような生活をしたら、地球が何コ必要でしょう?

エコフット診断クイズの詳細はこちら

ニュース

ブログ

オーバーシュートの蓄積が貧困を増やす

国連が2022年7月に発表した『持続可能な開発目標(SDGs)報告2022』によると、気候危機、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻により、貧困や飢餓に陥る人が増えています。また、食料・エネルギー・肥料の価格高騰によって国際貿易や金融市場が混乱するとともに、世界の食料安全保障と援助の流れが脅かされています。 一方、オーバーシュートの状態が半世紀以上も続き、生物多様性の大幅な減少、大気中の温室効果ガスの過剰な蓄積などが多く報告されています。その結果、異常気象、森林火災、干ばつ、洪水が多数発生し、人命や生活の基盤が失われています。あわせて食料やエネルギーをめぐる競争が激しくなっています。食料や木材など自然資源は国際貿易によって取引されており、世界市場に応じた価格で資源を購入できない国は、自然資源の不足という深刻な問題を抱えています。 世界人口の72パーセントは低所得と資源赤字の二重苦 エコロジカル・フットプリント分析で各国の所得とバイオキャパシティの制約を調べた結果、世界人口の72%に当たる人々は、所得が世界平均以下で、かつバイオキャパシティ赤字の国に住んでおり、その数は増えていることがわかりました(ワケナゲルら、2021)。 (出典:Wackernagel,M.et al. 2021) 各国を、低所得・バイオキャパシティ黒字国(LR)、高所得・バイオキャパシティ黒字国(HR)、高所得・バイオキャパシティ赤字国(HD)、低所得・バイオキャパシティ赤字国(LD)の4つに分類したものが左図です。 横軸は、平均年間所得(1人当たり名目US$)で、2017年の世界平均の1人当たりGDP 10,380米ドルで区切り、高所得国と低所得国に区分します。縦軸は、各国のバイオキャパシティをエコロジカル・フットプリントと比較したときに、バイオキャパシティの余剰(+)または不足(-)を示し、余剰がある黒字国と不足している赤字国とに区分します。低所得・バイオキャパシティ赤字国(LD)は、インド、ジンバブエなど世界人口の72%(2017年時点で54億人)を占めます。このとき世界のオーバーシュートは73%に達しています。一方、1980年にはLD国の人口は57%、オーバーシュートは19%でした。オーバーシュートが増えるとともに、バイオキャパシティが赤字で、不足分を海外から十分に購入する力をもたない国の人口が増えていることがわかります。オーバーシュートは自然資源が枯渇し、温暖化による異常気象が増えることを示しています。LD国で、森林や海洋資源が減り、干ばつや洪水などが発生すれば、自国での生産自体も不十分になり、海外から自然資源を十分調達できない購買力不足と重なって、貧困はさらに深刻化していきます。 日本7.8個分の消費 日本は、フランス、ドイツなどと同じで、高所得・バイオキャパシティ赤字国です。日本の暮らしは、自国のバイオキャパシティだけではまかなえず、経済力によって海外の自然資源を輸入して成り立っています。 国内のバイオキャパシティだけで日本の消費や廃棄吸収をまかなうとしたら、日本が7.8個必要になる計算です。G7のなかで、もっとも海外資源に依存しています(右図) 。 また、もし世界の人々が日本と同じ暮らしをしたら地球2.9個分になり、世界のオーバーシュートに影響を及ぼしています。日本の暮らしを維持し、海外の貧困をなくすためは、日本の消費が海外の自然環境を悪化させず、また地域住民の収益につながることが求められます。また、日本のエコロジカル・フットプリント総量を減らすしくみをつくることも、まったなしの緊急課題です。…
August 5, 2022
イベント

アースオーバーシュートディに エクアドルが世界に行動呼びかけ

2022年7月28日、エクアドル環境・水資源・エコロジー移行省は、アースオーバーシュートディ特別イベントを開催しました。イベントには、エクアドルのグスタボ・マンリケ環境大臣、ルイス・バヤス・バルディビエソ外務省副大臣、エコロジカル・フットプリント開発者のひとりであるマティス・ワケナゲル博士(グローバル・フットプリント・ネットワーク)が登壇しました。また、コロンビア、英国、フランス、コンゴ、パナマの大臣や大使からビデオメッセージが寄せられました。JTNDaWZyYW1lJTIwc3JjJTNEJTIyaHR0cHMlM0ElMkYlMkZ3d3cuZmFjZWJvb2suY29tJTJGcGx1Z2lucyUyRnZpZGVvLnBocCUzRmhyZWYlM0RodHRwcyUyNTNBJTI1MkYlMjUyRnd3dy5mYWNlYm9vay5jb20lMjUyRkFtYmllbnRlRWMlMjUyRnZpZGVvcyUyNTJGNTYzNDIzNzA4NjExNzU0JTI1MkYlMjZzaG93X3RleHQlM0QwJTI2d2lkdGglM0Q1NjAlMjIlMjB3aWR0aCUzRCUyMjU2MCUyMiUyMGhlaWdodCUzRCUyMjMxNSUyMiUyMHN0eWxlJTNEJTIyYm9yZGVyJTNBbm9uZSUzQm92ZXJmbG93JTNBaGlkZGVuJTIyJTIwc2Nyb2xsaW5nJTNEJTIybm8lMjIlMjBmcmFtZWJvcmRlciUzRCUyMjAlMjIlMjBhbGxvd2Z1bGxzY3JlZW4lM0QlMjJ0cnVlJTIyJTIwYWxsb3clM0QlMjJhdXRvcGxheSUzQiUyMGNsaXBib2FyZC13cml0ZSUzQiUyMGVuY3J5cHRlZC1tZWRpYSUzQiUyMHBpY3R1cmUtaW4tcGljdHVyZSUzQiUyMHdlYi1zaGFyZSUyMiUyMGFsbG93RnVsbFNjcmVlbiUzRCUyMnRydWUlMjIlM0UlM0MlMkZpZnJhbWUlM0U=マンリケ環境大臣は、「アースオーバーシュートディは、現在の生産と消費のシステムが、地球に住み続けるという意思に適合していないことを示すものです。自然資源をよりよく保全し、人間の自然への需要を管理するためには、持続可能性と再生に基づく新しい開発モデルをめざした具体的な共同行動が必要です。エクアドルから世界に向けて、この大義にコミットすることを呼びかけます。」と訴えました。 ワケナゲル氏は、「資源の確保は、経済力を左右する重要な要素になりつつあります。誰かが先に行動するのを待つメリットはありません。むしろ、気候変動や資源の制約がすすむ未来は避けがたく、率先して資源を適切に管理する能力を高めることが、すべての企業、都市、国の利益となるはずです。」と述べました。 エクアドルでは、2008年には自然の権利を明記した憲法が国民投票で承認されました。また、自国の自然資源と消費行動のバランスを測る指標として、エコロジカル・フットプリント分析を取り入れました。エクアドルは、ガラパゴス諸島やアマゾン熱帯雨林など世界有数の豊かな生物多様性のもと、かつては十分な生物生産力(バイオキャパシティ)があり、自国の消費や廃棄吸収に必要な量を十分上回っていました。しかし、人口増にともなう持続可能でない開発や森林破壊、原材料輸出に依存した経済によって、バイオキャパシティが赤字に近づきました(下図参照)。そのため、バイオキャパシティを赤字にしない計画を立案したのです。また、もし世界の人々がエクアドルと同じ暮らしをしたら、地球1.08個分(2018年)であり、ほぼ地球1個分の暮らしです。 グローバル・フットプリント・ネットワーク プレスリリース エクアドル ケーススタディ エコロジカル・フットプリント・データベース ※ヘッダー写真 © Global Footprint Network
August 5, 2022
イベント

AGC株式会社・社内セミナー 「エコロジカル・フットプリント開発の経緯とビジネスへの応用」にて講演

2022年6月27日(月)、AGC株式会社の社内セミナー:「エコロジカル・フットプリント開発の経緯とビジネスへの応用」にて、EFJ会長の和田喜彦(同志社大学経済学部教授)、同理事の伊波克典(グローバル・フットプリント・ネットワーク研究員)がオンライン講演をおこないました。 本講演は、AGCグループのCNA活動(Cross-divisional Network Activity:部門横断的ネットワーク活動)の一環として実施。エコロジカル・フットプリントが、企業価値の再構築(リブランディング)をエンパワーするツールとなり得るのかを検討する場となりました。 講演の前半部分では和田が、エコロジカル・フットプリント誕生と開発の経緯をたどりつつ、『生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー』(2021年)に象徴されるように、エコロジカル・フットプリントの概念が世界的に再認識されつつある背景を説明。後半部分では伊波から、日本におけるエコロジカル・フットプリント分析の活用事例や、近年注目を集めているナッジを効かせた「デザイン的アプローチ」をエコロジカル・フットプリント削減へ応用する可能性について紹介しました。 エコロジカル・フットプリント指標が開発されてから30年。その間、サスティナビリティ(持続可能性)に対する人々の捉え方は大きく変化しています。EFJは今後も、多くの関係者と対話を重ね、具体的な解決策を共に考えていくために務めてまいります。 AGC株式会社ホームページ「サステナビリティ」
July 10, 2022
empty seatsイベント

産総研×DBJ共催シンポ 「地球1個分の資源で生きる」 にてEFJ会長の和田が基調講演

2022年3月4日、(株)日本政策投資銀行(DBJ)グループおよび(国研)産業技術総合研究所(産総研)共催のオンラインシンポジウム:「地球1個分の資源で生きる~持続可能な社会のための新しい資源循環技術~」にて、EFJ会長の和田喜彦(同志社大学経済学部教授)が基調講演をおこないました。 本シンポジウムは、人間も経済も自然の一部として存在しているという世界観に立脚しつつ自然生態系の価値を組み込む新しい経済学を紹介するとともに、最先端の資源循環利用技術を共有して循環経済への道筋を探るもので、約400人の参加がありました。 和田からは、「地球生態系とのバランス指標としてのエコロジカル・フットプリント~ダスグプタ・レビューの示す未来」として、経済学のパラダイムシフトともいえるレビューの概要と、エコロジカル・フットプリント分析について紹介しました。 パネリストからは、「地球1個分の資源で暮らすことを、もはや避けて通ることはできない」「サステナビリティの指標として、エコロジカル・フットプリントがこれからのキーワードになる」といったお話がありました。 さらに、循環型社会にむけて、新たな課題を各分野の知見を集めて解決していくことの必要性を共有しました。 EFJは今後も、さまざまな分野でエコロジカル・フットプリントの理解が深まり、持続可能な生産と消費に貢献できるよう務めてまいります。 日本経済研究所・「産総研×DBJグループ共催シンポジウムのご案内」 日本経済研究所・日経研7月号「特集」  
June 9, 2022